研究所設立によせて
次世代FVC研究所の設立おめでとうございます。
この2~ 3年皆様と勉強会を開催して参りましたところ、このような研究所開設に結びつけられた事に敬意を表したいと思います。
私は、本来農業畑の人間でありまして、「農業・農村を夢や希望のあるものにしたい」という思いを持って学問をやって参りました。
ただ、私が学問に取り組んだ1970年代は、農村は本当に豊かなのか、また農家は本当に農業に対し誇りや自尊心を持っているのか大きな疑問を感じていました。
理想への突破口はどこにあるのか、よくよく考えて参りましたが、やはり農業経営が自立し安定的なものになり、次に続く世代が農業を行いたいと言う気持ちを醸成することが一番ではないかとまずは考えたわけであります。そうしたところから「営利」と言うことを考え、そのためのシステムを考えて参りました。
農業の成長産業化や農業融合産業論、機関車農家論といった様々なコンセプトを作って参りましたが、フードバリューチェーンを意識する農業もそうした考えの一環としてありました。それによって農業はスマイルカーブの底に沈むことから逃れられるのではないかと考えたのです。
近年、農村でも多くの賛同者を得るようになって参りましたが、それにつれ、もっと良い食材を、はたまたもっと美しい農村をと言ったことも巷間で言われるようになって参りました。おそらく、農業は2010年ぐらいを境に大きくパラダイムを転換したのだと思います。
最近は、SDGsといった考えも出て参りましたが、今になって思えば、私のしてきたことはどうもサステナビリティの追求で説明が付くようにも思います。
次世代FVC研究所は農業に留まらず、ネットワークを築きながら「人々の幸せ」を追い求める研究所と聞いております。今後、新しい社会的価値の創造・実現に一歩でも近づけるよう、この研究所を媒介とした皆様のますますのご活躍を祈念してやみません。
大泉一貫